大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長、「汐留鉄道倶楽部」執筆者
「新型コロナウイルス禍の長いトンネルを抜けると楽園であった」。
そんな明るい前途が、鉄道旅行にも影を落としてきた新型コロナウイルス禍の先に待ち受けていることを願わずにはいられません。
トンネルの出口から差し込む一筋の光に映るのが、2021年度の「鉄旅オブザイヤー」の旅行会社部門への応募が83件と前年度の2倍近くになり、参加者の健康管理に細心の注意を払いながらも、独創的で充実した内容のツアーが多く寄せられたという事実です。
通常は走らない行程の貸し切り列車を走らせたり、人気ゲームの世界を満喫できたり、“工場萌え”の世界にいざなったりして顧客を意欲的に開拓するツアーが目立ち、逆境の中でも参加者に喜んでもらおうと知恵を絞るツアープランナーら関係者の皆様の心意気を垣間見ることができました。
また、新型コロナ禍による訪日外国人旅行の蒸発で観光地に大きな打撃を受けている中で、旅行会社が日本人消費者を送客したことは地域経済に福音をもたらしています。
そうした社会的意義や背景も踏まえて採点していると応募商品のいずれも甲乙つけがたく、非常に苦労して審査をしたのが実情です。
22年度は新型コロナ感染者数が下火になり、鉄道旅行も本格的な攻勢に転じるアフターコロナ時代の幕開けになるのではないかと希望に胸を膨らませています。
今年9月23日に西九州新幹線の武雄温泉(佐賀県)―長崎間が暫定開業するなど鉄道の明るい話題も待ち受けており、22年度ははるかに明るい気持ちで意欲的なツアーの数々を審査させていただいていることを強く願っています(米首都ワシントンより)。